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【コラム】SUNNというアンプを知ってますか?

Sunn O))) are Peeved That Someone is Aping Their Aped Logo | MetalSucks

こんにちは、Madsです。

 

皆さんはSUNNというアンプメーカーをご存知でしょうか?

 

日本ではThee Michelle Gun ElephantBorisが使用しており、ロゴだけでも目にしたことのある方もいると思います。

(余談ですがアベフトシさん、ほんとにSUNN使ってたのかな〜と思ってライブ映像漁ったけど見つからなかった、、『暴かれた世界』のMVにチラチラ映ってるのは「Model T」ですね。『ロデオ・タンダム・ビート・スペクター』は全てModel Tで録ったらしい)

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Thee Michell Gun Elephant『暴かれた世界』MVより

 

また「Model T」はドゥームサウンドを愛する海外ギタリストから絶大な支持を得ており、多くのエフェクターブランドがその歪みを再現したペダルを出しています。EarthQuaker Devicesの「Acapluco Gold」やD-Soundの「Sunny」などが代表例です。

 

しかし、国内のネットでどれだけ調べてもSUNNがどんなブランドなのか情報を得ることは難しかったです。かなり謎に包まれています。

というか調べれば調べるほど「The Twin」ってFenderのアンプじゃないの?とか、SUNNってバンドの名前じゃない?とか、疑問だらけです。

 

 

そこで海外のサイトをいろいろ調べたところ、SUNNの歴史を詳しく紹介する記事を見つけました。

www.talkbass.com

 

今回は、この記事を要約しつつ、その他に得られた情報を加えたコラムになります。

謎に包まれたSUNNの歴史を知っていただけたら幸いです。

 

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□Sunn社の設立

"Sunn社の歴史は1960年代のアメリカから始まります。THE KINGSMENというバンドのギターを担当していたNorm Sundholmと、兄のConradによって設立されました。

初めはConradが設計した真空管アンプを中心にガレージで製作を続けましたが、やがて注文が増えて手狭になると工場に移転。それを機にNormは所有株を全てConradに譲り、以降の経営を任せることに。するとConradの経営の元でSunn社は急成長を遂げ、The Who、Rolling Stones、The Jimi Hendrix Experrienceなどのさまざまなメジャーバンドがツアーで使うようになっていきました。

 

前述の「Model T」は当時こんな見た目でした。(公式な写真がないのでReverbの販売済商品から写真を拝借しました)

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ノブとロゴが赤いバージョンも存在します。

 

 

□第一次買収

その成長ぶりに目をつけたHartzell Industries社がSunn社を買収します。(時期は不明)

その頃になると、Marshallがアンプ業界を席巻し始めており、Sunnはハイエンド真空管アンプの市場でシェアを維持できなくなっていました。そのためHartzell社の意向により利益率重視のトランジスタアンプの生産に方針転換します。この時、Conradが設計したSunn本来のサウンドは失われてしまいました。

 

1980年にHartzell社の社長が飛行機事故で急逝します。ギターアンプについて全く関心のなかった遺族たちは、採算のとれないSunnブランドを停止してしまいました。当時はプロ用アンプの分野でSunnはほとんど使われておらず、Sunnの存在感が薄れたことを惜しむ声はほとんどありませんでした。

1985年にFender Music Instruments Co.(以下、FMIC)がSunnブランドを買い取るまでの数年間は死んだような状態でした。

 

 

□第二次買収

FMICは、Fenderとは別ラインでSunnのブランドを復活させました。「Model T」などの真空管アンプを復刻しつつ、AmpegやMarshallに対抗すべくアンプとキャビネットをデザインし、ブランドを再起動させたのです。(「The Twin」はFenderとSunn両方から同名モデルとして販売されていたようです。また、日本では山野楽器が代理店となり100v仕様が販売されていました。)

華々しく復活するかに見えたSunnですが、残念ながら上手くいきませんでした。

 

FMICによって復刻された「Model T」がこちら。

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見た目は変わりましたがConradの設計を踏襲しつつ、現代的なアレンジを加えたより実用的なアンプとして生まれ変わりました。

 

 

□生産終了

素晴らしい製品を出しながらなぜ失敗に終わったのか、その理由は定かではありません。

おそらくソリッドステート時代のSUNNアンプの負の印象を拭い去ることができなかったからでしょう。いずれにせよFMICとしてはFenderとSunn、二つのブランドを別々に販売するには満足する規模ではありませんでした。

Sunnのベースアンプの内、特に優れていた二つはFenderの「Bassman 300 Pro」「Bassman 1200 Pro」として引き継がれました。

そして優れた真空管ギターアンプだった「Model T」はひっそりと生産終了してしまいました。

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以上がSUNNのおおまかな歴史です。

原文ではさらに詳しくSUNNの歴史を辿ることができます。興味があったら是非読んでみてください。

 

今やSUNNブランドはFMICの公式HPも存在せず、どんなラインナップだったのか、各モデルがどんな仕様だったのかなどを知る術がありません。

そもそも、SUNNアンプがいつ頃まで作られ販売されていたのかすらわかりません。それくらいひっそりと市場から姿を消してしまいました。

 

さらに同名・同ロゴを使用しているバンドが現在も活動していることが、余計に情報を混乱させています。もちろんバンドの方が後発で、"かつて存在したアンプブランドに由来する"とWikipediaにあるのですが、Fender公認なのか?など謎な部分が多いです。

ちなみにバンド名はSunn O))) が正式名称です。記号を忘れないように注意しましょう。

(またまた余談ですが、EQDの「Life Pedal」はこのバンドとコラボしたモデル。「Model T」をブーストするための最適な組み合わせとしてオクターブファズ、white face rat、クリーンブーストを一つの筐体に収めたペダルです。)

www.youtube.com

 

 

日本ではほとんど知名度がないため、中古相場はけっこう低め。

今でもヤフオクやデジマートで定期的に出品されており、モデルを選ばなければ比較的簡単に入手できたりします。

ただし「Model T」だけは高騰傾向にありオリジナル、リイシューともに滅多に市場に出てきません。

 

非常にマニアックで試す機会の少ないSUNNのアンプですが、興味深い歴史と実績のあるブランドなのは間違いありません。

今後再評価される日が来るかもしれませんね。