ma機材レビュー

忘備録を兼ねて実際に使った機材をレビューします

【番外編】そっと手放したペダルたち2023

こんにちは、maです。

すっかり筆不精です。ひとつのペダルについてじっくり書こうとすると、言語化の壁に突き当たってだんだん億劫になってくるんですよね。他者がイメージできるように伝えることの難しさを感じます。

 

さて、そんな私でも気軽に書けるのがこの番外編です。

かなりぶっちゃけて書きますので、そのペダルのファンの方は読むと不快に思われるかもしれません。あくまで一意見として受け止めていただけると幸いです。

 

今回は以下を取り上げます。

Centaur Gold No Picture

EAEのペダルたち

LVXとH90

KERNOM / RIDGE

MF104MとMF108M

 

① Centaur Gold No Picture

新しい機材の資金として売却しました。ぶっちゃけると買ったときの数倍の価格で売れました。ここ数年の高騰ぶりは異常です。ただケンタバブルはいよいよ終わりつつあるなと思います。高騰前に買った人たちが次々と高額で売りに出したことで供給過多になり始めました。

ケンタは、それを活かす使い方を心得てこそ価値を実感できるペダルです。なんとなく良い音を目指して買おうと思ってる人は辞めた方がいいです。

 

② EAEのペダルたち

具体的には「Model feT」「Longsword」「Halberd」「Hypersleep」の4つです。

EAEは私が海外エフェクターにハマるきっかけを作ったブランドでした。当時のモデルは限定物も含めてほぼ全て試しましたし、日本で一番詳しかったと自負しています。

とはいえ4年の年月で私のサウンド嗜好も随分変わってきました。その後、新しく手に入れたペダルたちに押されて使用頻度が少なくってきたため手放しました。

また、国内取り扱いが始まって簡単に手に入るようになったことも要因のひとつです。唯一Hypersleepだけは二度と手に入らないので悩んだんですが、肥やしにしておくより売って別のペダルを試す資金にしたほうが有益かと思って決断しました。

 

③ LVXとH90

LVXは最初、自分で好みのディレイを作り上げる面白さを感じられたのですが、使っているうちにめんどくささが勝ってしまいました。これならプラグインの方が100倍楽だわと思ってしまったらもう使う気力が湧かなくなってしまったんです。エディタがあればもう少し頑張れたかも…

H90も細かい設定やら何やらが億劫になってしまいました。ただ、こっちはエディタもあって直感的に操作できました。そう考えるとLVXにエディタがあってもやっぱり手放してたでしょう。この2機種で多機能マルチは向いてないと悟りました。

 

④ KERNOM / RIDGE

もうすぐ国内取り扱いが始まりますね。

ボードを組むことを前提に「幅広い音作りができる」「プリセットあり」という点、またその素晴らしいデザインにも惹かれて半年以上前にフランスから個人輸入しました。

前評判どおり優秀なオーバードライブでしたが、どうしても受け入れられなかった問題がありました。

オンオフのフットスイッチが、押し込んで離したときに反応することです。

一般的なペダルの感覚でオンオフするとどうしてもコンマ数秒遅れます。音を鳴らしながらオンオフする場合、”少し前にフットスイッチに足を乗せておいて切り替えのタイミングで離す”という新しい技術を習得せねばなりません。スイッチャーなどを使えば問題ないのですが、私は直列派なので解決できませんでした。

これから国内で流通する分は、もしかしたら仕様が変わってるかもしれないので要確認です。

 

⑤ Moogerfooger

MF-104M(アナログディレイ)とMF-108M(コーラス・フランジャー)の2つです。これもケンタと同じで、ペダルそのものが問題というより単純に資金作りのために放出しました。MFシリーズは中古価格が年々値上がりしています。大きな要因は、既に生産完了していること、生産数がそれほど多くなかったことの2点です。またフルシアンテが101や103を使っていたことも影響を与えているはずです。

しかし、希少で高騰している=良い音、と盲目的に理解するのは危険です。ケンタの項でも記したとおり、その音を理解して使いこなせてこそ価値があります。そういう意味でMFシリーズは、他のペダルでは出せない音を出せるのは間違いないでしょう。

ついでに問題提起しておきますが、101や103はフルシアンテという偉大なお手本がありますから、どう使えばかっこいい音が出せるのかみんな知っています。では104や108はどうでしょうか?私はボードに入れている有名プレイヤーをほとんど見たことがありません(知ってたら教えてください)それだけ扱いが難しいペダルなのではないか、とも言えるのではないでしょうか。すっかり話が逸れてしまってすみません

【コラム】Two Rock「Opal」について

 


こんにちは、maです。

いろいろあってTwo Rock「Opal」について調べました。

今回は完全に忘備録です。せっかく調べたので共有できる形でまとめようと思い筆をとりました。「らしい」とか「ようです」が多いですので、話半分に読んでください。

 

Two-Rockは昔から短期間にディスコンとモデルチェンジ、さらには復刻生産を繰り返しています。モデル名は知ってるけどどの時期にどんな仕様で作られたのか分からないという方は多いのではないでしょうか?特に黎明期から2010年頃あたりは情報が少ないです。
今回ブログを書くにあたり海外のネットを漁っていろいろ調べましたが、情報の不足や多少はズレはあるかもしれません。あらかじめご了承ください。もしもさらに正確な情報をお持ちの方はぜひコメントにてお知らせください。


「Opal」はまさにTwo Rock黎明期に開発されたモデルです。
Two RockはもともとK&Mという会社のブランドです。アンプ製造を始めた地がカリフォルニアのTwo-Rockという場所の近くだったことが由来だそうです。

 

K&Mの設立は1999年。最初はK&M Analog Designsという名義で10台のモデル名もシリアルも無いアンプを使ったのが始まりです。
その後、Two Rockに名義を変えて「Emerald」「Sappire」「Amethist」という宝石の名を冠したモデルを作っていきます。さらに各モデル名の後ろにProだったりSpecialだったりが付いた上位モデル(あるいは特別モデル)も作られました。


「Opal」が開発されたのは2001年らしいです。
当時、北カリフォルニアで開催されたアンプの競技会にフラッグシップだった「Emerald Pro」と新しく開発したプロトタイプの通称"Wood"Ampを出展したそうです。このWood Ampをベースにして新しく開発されたのが「Opal」です。


特徴は、内部に使われる配線を可能な限り短くすることでタッチレスポンスやスピード感を追求していること。本当かどうか不明ですが、75%のワイヤーを削減したと当時の商品説明に書かれています。この特徴を指して製作者は「Opal」を"ワイヤレス・アンプ"という愛称で呼んでいたそうです。販売当時は数量限定、50Wの6L6GC 12AX7のフォーマットでのみ入手可能だったとのこと。

 

余談ですが、「Custom Reverb」の前身モデルとなる「K&M Custom」が開発されたのはもう少しあとだったようです。また宝石シリーズ(勝手呼んでるだけです)は他にも「Topaz」「Ruby」「Onyx」「Jade」など多岐に渡ります。全てが別々のモデルというわけではなく、宝石シリーズの後継機には宝石の名前が付いているみたいです。例えば「Topaz」は「Emerald Pro」の後継機です。

時系列で見ると毎年のように新しいモデルが出ては消えていってます。それだけ進化し続けているブランドとも言えるのかもしれないです。

 

こちらからTwo-Rockのディスコンモデルの情報を得ることができます。

Legacy Amps | Two-Rock Amplifiers

 

そんな盛衰の激しいブランド内でも「Opal」は2001年〜2007年頃まで作られていたらしいので、評価の高いモデルだったのではないでしょうか?(数量限定ってのはあとから撤回したのかもですね

 

他に「Opal Signeature」なるモデルも2007年頃に作られています。ただしこのモデルに関しては公式HPにも記載がなく、当時販売していた楽器店の紹介ブログなどでモデル名と写真が確認できたのみで詳細は不明です。

 

【レビュー】Death By Audio / Fuzz War

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こんにちは、maです。

 

すっかり更新が滞ってしまいました。

最近は増えすぎた機材の断捨離に追われています。月日が経てば好みも変わるもので、かつて黒ペダル警察と自称していた頃の面影はすっかり薄くなり、黒いペダルは残りわずかとなってしまいました。

今回は残された黒ペダルのひとつをご紹介します。

 

Death By Audio(以下DBA)の「Fuzz War」です。

 

DBAと言えば2018年頃から(すみません、私の感覚ではそれくらいだったのですが、もっと前だったかもしれません。2023.1.28追記)日本でも流通し始めて、現在ではすっかり認知された感のあるアメリカ発のブランドです。多数のモデルがありますが、どれもこれも非常にクセの強いものばかり。公式の紹介動画を見ていただくとビルダーさんたちの頭のぶっ飛び具合がよく分かると思います。変態的・破壊的なサウンドを求める過激派ペダラーたち御用達ブランドがDBAなのです。

 

そんなDBAの看板ペダルとも言えるのがこの「Fuzz War」です。

公式キャッチコピーは

”THE FUZZ OF ALL FUZZES(ファズの中のファズ)”

正直、大袈裟とも言えないポテンシャルを秘めています。

 

さらにこの真っ黒な個体は、2019年のブラックフライデーにて100台限定で販売された"Blacked Out"というカラーです。たぶん日本国内には数台しかないと思います。

 

さて話を戻します。

まず、Fuzz Warをお勧めしたい人

・現行のビッグマフの抜けの悪さ、音量などに不満を感じてる人

・バンドで一番デカい音を出したい人

・ぎゅっと詰まった密度のあるファズサウンドを求める人

 

サウンドは現行ビッグマフを進化させたような「ズモ―ッ」っという密度のある歪みです。音が散らないで塊になって飛び出してくるような印象があります。輪郭がくっきりしているので、ビッグマフのようにバンドアンサンブルでも埋もれないと思います。

加えて、とんでもない爆音が出ます。自宅ではボリュームを8時くらいが限界。ヘタに上げ過ぎると家が壊れますし、スタジオでは全ての音をかき消すので絶対メンバーに怒られます。それくらいに轟音爆音です。現行のビッグマフを使っていて、物足りないなあとか、この音色でリードを弾きたいけど抜けないんだよなあ、と感じている人に強くおすすめします。

 

余談ですが、DBA主宰のオリヴァー氏のインタビューがギターマガジンにかつて掲載されていました。その中でFuzz Warの使い方について質問され『まずボリュームを目一杯回すんだ』みたいなことを言っていて、この人は正気ではないと思ったことを覚えています。

ちなみに現行のFuzz Warは正確にはV2で、初期はボリュームノブはついておらず筐体内部のトリムで調整する仕様でした。基本的に全開で使え!ということだったみたいですが、爆音過ぎるので簡単に調整できるよう外にノブを増やしたのではないかと思います。

 

向かって左のFUZZがゲインなのですが、回し切っても音が潰れることもなく意外にも歪み量は控えめな印象。逆にそのおかげで、前述のとおり埋もれない詰まったサウンドになっているのだと感じます。

またTONEはビッグマフのような”シーソー型”ではありません。中央を起点として、左に回すとミッドスクープしたドンシャリサウンド、右に回すとハイミッドを強調した尖ったサウンドになっていきます。調整が非常にしやすいですし、全部使えるポイントとは言いませんが音色の幅もけっこう広いと思います。

轟音=低音が凄い、ベースと被るというイメージがあるかもしれませんが、FuzzWarはTONEの設定次第できちんと棲み分けの効いた音作りも出来ます。ただぶっ飛んでいるだけでなくて、バンドで普通に使うこともしっかり考えられてると感じます。

 

最後に重要なのが筐体の耐久性。ライブで思いきり踏んでも壊れない作りになっているとのこと。またノブが大きいのは足で操作することを想定しているそうです。

 

どうでしょう?ヤバいファズであることが少しは伝わりましたでしょうか?

ファズの中のファズ、というキャッチコピーも真実味を帯びてきたのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

【番外編】そっと手放したペダルたち2022前半

こんにちは、maです。


番外編「そっと手放したペダルたち」第二弾です。
2022年前半で整理したペダルがたくさんありますので、その理由などを今回もつらつらまとめて参ります。


①ロシアンマフ トールフォント
②CBA版ジェネロス V1
③EQD Avalanche Run V2
④EQD Westwood
⑤Orgabender OC81Z

 


かなり率直に思ったことを書いてますので、私が手放したペダルが好きな人にとっては不快な内容かもしれません。。。すみません、先に謝っておきます。

 


① ロシアンマフ トールフォント
シビルウォーを貸していただく機会がありまして、比較したところトールフォントが物足りなく感じてしまったからです。


好みの問題だと思うのでどちらが良いというわけではありませんが、私は完全にシビルウォーの方が自分に合うと感じました。ですから、いつかシビルウォーを手に入れることにしてトールフォントとはお別れすることになりました。

 


② CBA版ジェネロス V1
最も大きな理由はXLN Audioの「RC-20 Retro」というプラグインを導入したことです。
DTMでほぼ同じ効果を得られますし、操作も直感的だしより豊富なLoFiエフェクトに対応しているので、わざわざジェネロスを使う必要が全くなくなってしまいました。


それでも限定1000台のペダルということで、CBAファンとしてコレクターアイテム的に所有する意味もあったのですが、V2が発表されて誰でもいつでも手に入るペダルになったため放出することにしました。

 


③ EQD Avalanche Run V2
約3年お世話になったペダルです。
コンパクトのデジタルディレイでこいつ以上に使い勝手のよいペダルは未だに出会えてません。


ではなぜ手放すかというと、Toneczarの「Echoczar」に出会ったから。これまで使ってきた全てのディレイの中で一番好きな音かもしれません。ウォームでクリア、私の好きポイントを完璧に押さえてました。ディレイはこれ一台でいいや、となってしまいました。


が、もしEchoczarを買ってなかったらAvalanche Runは使い続けていたと思います。それくらい優秀なペダルです。

 


④ EQD Westwood
もう二度も手に入らないであろう希少なBlacked OutのWestwoodでした。
それでも放出しようと思ったのは、EQDのチューニングがどうも好みに合わなくなってきたからです。このペダル自体長らく使っていなくて、希少でデザインが好きだからという理由で残しておいたものでした。


実はEQDのHizmitasも買って使ってみて、たしかに良いサウンドでした。しかしEQDの歪みペダルに共通するなんというか"音の硬さ"みたいなものがどうしても苦手になってしまいました。こればっかりは相性なのでどうしようもありません。
Empressのペダルも同じような理由で全て手放してしまいましたしね、、

 


⑤ Orgabender OC81Z
理由は①と似てます。DAMの初期MK2を触らせてもらって衝撃を受けたからです。
より良いものを知ってしまったからには、これで満足するわけにはいかなくなりました。というわけでこちらを手放してDAMのMK2を手に入れる機会に備えることにしました。

【レビュー】CULT / Ray

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こんにちは、maです。

 

とても熱い毎日が続いていますが、皆さん元気にMNGしておられますでしょうか?

私はと言えばメインのアンプが定まりまして、それに合わせて手持ちのペダルの整理しております。アンプとエフェクターの相性ってのはやはりあるんだなあ、としみじみ思います。

 

さて、今回は今話題のペダル・CULTの「Ray」をレビューします。

既にインプレッションはTwitterでお伝えしていますが、それらを改めてブログにてまとめてまいります。

 

最初に断っておきますが、あくまで私見です。

人によっては全く違う見解をお持ちの方もいるかと思います。

あくまでもいち意見として参考にしていただけますと幸いです。

 

最初に「Ray」がどんなペダルかを完結に述べます。

 

『ビンテージのProCo RAT(Large Box~White Faceまで)の、ゲイン9時までサウンドをオーバードライブとして現代的に構築し直したペダル』

 

R4.10.30追記

大事なことを書き忘れていました。。。

このブログの内容はRayを18Vで駆動させた時のものだと思ってください。

ずっと18Vで使っていたので9Vとの違いをきちんと確認していませんでした。9Vメインで使ってる方が読むと?となるかもしれません。

 

まさにこれです。

・原音に倍音がまとわりついてくる感じ

・Trebleがカバーしている帯域とそれに由来するレスポンスの速さ

・歪みの質感

、、、全てがそっくりです。大袈裟ではなく。

 

ビンテージRATをお持ちの方がいたら、ぜひ試してみてください。

ほとんど同じ音がするはずです。

 

こちらwhite faceとRayの比較です。

どちらがどちらか分かりますでしょうか?

 

最初に自分のアンプで鳴らしたとき、「あ、好きな音だわ~」と思いました。

そしてこれ、絶対に知ってる音だなとも思いました。

 

というのも、私はignition/of/mass/products//の「ART」というペダル(ビンテージのラージボックスRATを高精度で再現したペダル)の大ファンでして、それをローゲインで鳴らすクランチサウンドがめちゃくちゃ好きなのです。

様々な歪みペダルを試してきて、他にも好きなペダルはたくさんありますが、じゃあボードを組もうかとなると必ず「ART」に戻ってきてしまうくらいです。

 

この音はどうしてもビンテージRATでしか出せなくて、しかもWhte Faceまでの個体でしか再現できないのです。Black Faceでも試しましたがローゲインでは綺麗に鳴らせませんでした。

 

それでもしかしてと思い、比べてみたらドンピシャで同じ音がしました。

もちろん100%同じではありません。

ただ違いと言えば

・BassとTrebleが完全に独立しており、RATでハイを強調すると薄くなりがちなロー感を自由にコントロールできる

・ビンテージならではの偏った帯域が均されてモダンになっている(これはローを独立してコントロールできるからそう感じるだけかもしれない)

 

という点くらいです。これらはむしろ、ビンテージRATをクランチで使う上で不便だった点が現代的にアップデートされたということではないかと思います。

 

ちなみにCULT公式のHPには、次のような文言があります。

タッチレスポンス、アタックの速さをまず重視し、それに相反するはずの太さや粘り、心地良いコンプ感も感じさせる、汎用性の高いモダンなオーバードライブ。それを実現する回路はRayのためのオリジナルであり、陳腐な言葉ながら、“~~系”といったジャンルには属しません。

CULT / Ray | PEDAL SHOP CULT (cult-pedals.com)

 

正直ここまで似ていたら、意識していないはずがないです。

名前が「Rat」「Ray」で一文字違いなのも、偶然とは思えなくなります。

 

もしも比べることが出来る人がいたら、ぜひご意見を聞いてみたいです。

自分だけがそう思うのか、それとも実際にそうなのかとても気になります。

 

とは言え、このペダルが素晴らしいサウンドなのは間違いありません。

個人的には当面のあいだメインの歪みとして使っていこうと思っています。

【レビュー】Harlot V3 / Kingsley Amplifiers

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こんにちは、maです。

今回は先日の機材会でとても好評だったペダルをご紹介します。

 

Kingsley Amplifiersの「Harlot V3」です。

 

■Kingsley Amplifiersとは

Kingsley Amplifiers(以下Kingsley)は、カナダにあるブティックアンプメーカー。

創設者のSimon Jarret氏はイギリス出身のプロギタリスト。商品紹介動画はだいたいJarret氏自身が出演していて、めちゃくちゃかっこいいフレーズを弾いてます。

 

ペダルにもたくさんのラインナップがあり、アンプ制作の技術が存分に詰め込まれた仕様になっています。例えば、ほとんどのモデルが真空管内臓であることが特徴のひとつです。プリアンプペダルやドライブペダルのみならず、トレモロペダルにも真空管を使った機構を採用しています。

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ひとつひとつ手間をかけて作っているためか、直販では約1年待ちの状態です。

ちなみに2021年初めにHarlotとPageを注文した際は7か月待ちでした。ウェイティングリストに加えてもらえば必ず手に入りますし、デポジットも必要ありません。もし既に気になっている方がいましたら早めに問い合わせておくことをお勧めします。

 

■Harlot V3の仕様

Harlot V3は真空管内臓のオーバードライブペダルです。

採用されている管はTUNG-SOL製の12AX7が1つ。もちろん任意のメーカーのものに交換することも可能です。また真空管をドライブさせるためにJFETのトランジスタを使用しています。

V2までオプションの外部スイッチによるブーストさせていたものを、ひとつの筐体に納めた仕様になっており、左スイッチでMoreの歪みがプラスされます。

Lows、Highsのトグルスイッチは真ん中がユニティ。左で各帯域がカットされ、右でブーストされます。

 

9V電池は使用できません。真空管を使用するため、必要な電流量は500mAとデジタルペダル並み。そのため9vアダプタが付属しています。(電流量が十分であればパワーサプライでも使用可)

また、通電している間はバイパスしていても真空管が温まっている状態になります。使わないときは必ず電源を落としておきましょう。

 

そして真空管内臓型ペダルが避けて通れないのがノイズ問題です。このHarlotに関しては、若干フロアノイズが乗るくらいで単体で使う分には全く気にならないです。

 

サウンド

真空管特有の太くウォームな歪みです。

Gain12時以降から一気に歪み量が増え、アウトプットレベルも上がります。まさに真空管アンプをドライブさせた時に近い飽和感で、ふくよか且つ滑らかなサウンドだと感じます。

Toneはハイエンドをカットするように効きます。このToneと前述のトグルスイッチを組み合わせてサウンドを調整していきます。これらの効き具合が絶妙でほとんどどの位置でも使えるサウンドになります。

ギターやアンプとの組み合わせによる違いを微調整するように使ってもよし。ローやハイを足して積極的な音作りをしてもよし。非常に使い勝手が良いです。

 

正直なところこれまで試したオーバードライブの中で一、二を争うベストペダルです。

もちろん方向性や個性の違いで他にも好きなペダルはたくさんありますが"アンプライク"というカテゴリではこれに勝るペダルはなかなかない気がします。

 

 

 

【コラム】TSV808を振り返る

こんにちは、maです。

 

TSV808と言えばエフェクター好きな方で知らない人はいないでしょう。

 

日本が世界に誇るブランド「VEMURAM」と「Ibanez」のコラボモデル。それぞれの代表モデルであるTS808とJanRayを融合させたペダルで、全世界2000台限定で2019年に販売されました。コラボですが主導権はIbanez側にあったらしく、公式発表はIbanezから出されています。

 

最初にアナウンスがあったのは2019年1月。突如発表された二大ブランドの限定コラボにペダルマニア界隈が騒然となりました。

 

販売価格は約50,000円。この価格にも関わらず瞬く間に予約分完売になっていた記憶があります。(もしかしたら予約が始まったのはもう少し後だったかも、、、ちょっと記憶が曖昧ですみません

この価格について当時は"限定コラボとは言えTSに50,000円の価値ないでしょ?"という論調も少なくなかった気がします。

 

この時点では2019年の初夏に発売予定とのことでしたが、7月にIbanez公式より販売が遅れるとのお知らせが出ます。それがこちら。


https://www.ibanez.com/jp/news/detail/20190709111604.html

 

特注のブラスケースの生産が難航しているとのこと。そしてあのケース、なんとIbanez側が作っていたものだったのです。

販売予定を半年も遅らせるくらいですから、よほど拘って製作していたと見えます。Vemuramと同じクオリティで真鍮をTSと同形状に仕上げるのは相当な技術力を要したことでしょう。

 

そしてそのまま年末を迎え、みんながその存在を忘れかけていたころ。確かクリスマス前後だったと思いますが、予定通りに販売が告知されました。

 

ちなみにかく言う私は、サウンドハウスさんで買いました。予約してなくても販売開始日に普通に売ってたのでついポチってしまいました。そう、この頃は買おうと思えば普通に買えたんです。

 

しかしながら、ここで面白い事態が起きます。

なんと予定数の約半分しか供給できず、残りはまた後日に販売をすることなったのです。ただ当時、供給が間に合わなかったという情報を、自分がどこでどう知ったんだったか記憶がありません(すみません

またこの辺りの事情に関する公式のお知らせは、現在見つけることはできませんでした。

おそらく前述の特注ケースの問題が原因だったのではないかと推察されます。

 

現在、中古売買時に強調されている1stロット、2ndロットというのはこのことです。遅れて販売された分を2ndと、後から呼ぶようになったんですね。

 

もうひとつ面白い話です。

私が手に入れた1stロットのシリアルは500番台でした。Twitterで手に入れた人の報告見ると、軒並み三桁中盤。つまり1stと言っても日本に入ってきた分は割と後半に作られたものということになります。

日本ブランド同士のコラボなのに、日本が後回しにされたという悲しいペダルがTSV808なのです。

 

ちなみに二桁シリアルのTSV808がこちら。

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右側が二桁。左は後から手に入れた1700番台です。(最初に買った500番台は、高騰する前にほぼ定価で手放してしまったのでした。500番台はもう少し緑みが強かったです

 

明らかに色味が違います。

本来は最後までこの色味で売られるはずだったのでしょうか。しかし後半にいくにつれてどんどん緑みが薄くなり、縁の加工も無くなってムラのない茶色よりの色味になっていきます。1700番台に至ってはJanRayなどと比べてようやく緑かな?と感じるくらい。ほとんど茶色です。

さて、ここで思い出してもらいたい。2019年夏のアナウンスを。

 

"従来製品とは比較にならないほどのカスタム製品として仕上げる為に妥協できないポイントと判断し、こういったお知らせに至りました。"

 

いやいや、思い切り妥協してるやん!!!!

同じ時期に同じ値段で買って、なんで筐体の色味がここまで違うのか。2桁シリアルの頃は出来てたんだから時間かけたら同じ色味に出来るはずです。でもそれはやらずに妥協して、納期優先で日本人にはうっすい緑色の加工をしたものを販売したわけです。

なんなら実はサウンドまで違いますからね。

 

二桁の方は同じセッティングでもよりスッキリしていてTS808に近い雰囲気があります。後半のものはややゲインが高めというか、音像の太さがあります。派手なサウンドという印象です。

 

この二桁シリアルのTSV808を手にした時に、Ibanezへの不満が爆発しました。やるならどんだけ時間かけてでも妥協せずに同じクオリティで最後まで作ってほしかった。

 

 

さらにムカつくことにサウンドは半端なく良いです。

これを今後二度と作らないのは本当にもったいないと思います。この形、この色味にこだわらずにこのサウンドを再現したペダルを今後絶対に発売すべきだと思います。

 

(追記)

2ndロットが出たのは2020年の5月頃だったと記憶しています。この頃は、TSV808の評価もひと段落して熱はある程度おさまっていました。1st完売後の高額転売(と言っても7〜8万くらい)も落ち着き、買おうと思えば買えるペダルだったと思います。

2ndロット完売からしばらくは中古価格は定価とほぼ変わらないくらいまで下がってました。

 

ところがです。

2021年に入る前あたりから異様に高騰し始め、いつのまにか10万円を突破し今に至ります。

要因はよくわかりませんが、コロナ禍によるお家需要の増加とか、有名アーティストが使用したとか、VemuramのJanRay再評価の流れとか、いろいろ影響していると思います。

 

かくして今や15万くらい用意しなければ手に入らないペダルになってしまいました。

 

余談ですが、現在のエフェクター転売横行の火付け役になったのは間違いなくTSV808です。

限定や品薄のエフェクターは高額で売れるという認知を一気に広めてしまった罪深いペダルでもあります。(同じ時期にCULTのTS modやらOrga Face NKT275などが売られて余計に加熱しましたね

 

嘘か真か2022年になってジョンメイヤーがボードに採用したとかいう情報まであります。今後再販があるかわかりませんが、エフェクターの歴史に残るペダルになったのは間違いないでしょう。