ma機材レビュー

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【コラム】TSV808を振り返る

こんにちは、maです。

 

TSV808と言えばエフェクター好きな方で知らない人はいないでしょう。

 

日本が世界に誇るブランド「VEMURAM」と「Ibanez」のコラボモデル。それぞれの代表モデルであるTS808とJanRayを融合させたペダルで、全世界2000台限定で2019年に販売されました。コラボですが主導権はIbanez側にあったらしく、公式発表はIbanezから出されています。

 

最初にアナウンスがあったのは2019年1月。突如発表された二大ブランドの限定コラボにペダルマニア界隈が騒然となりました。

 

販売価格は約50,000円。この価格にも関わらず瞬く間に予約分完売になっていた記憶があります。(もしかしたら予約が始まったのはもう少し後だったかも、、、ちょっと記憶が曖昧ですみません

この価格について当時は"限定コラボとは言えTSに50,000円の価値ないでしょ?"という論調も少なくなかった気がします。

 

この時点では2019年の初夏に発売予定とのことでしたが、7月にIbanez公式より販売が遅れるとのお知らせが出ます。それがこちら。


https://www.ibanez.com/jp/news/detail/20190709111604.html

 

特注のブラスケースの生産が難航しているとのこと。そしてあのケース、なんとIbanez側が作っていたものだったのです。

販売予定を半年も遅らせるくらいですから、よほど拘って製作していたと見えます。Vemuramと同じクオリティで真鍮をTSと同形状に仕上げるのは相当な技術力を要したことでしょう。

 

そしてそのまま年末を迎え、みんながその存在を忘れかけていたころ。確かクリスマス前後だったと思いますが、予定通りに販売が告知されました。

 

ちなみにかく言う私は、サウンドハウスさんで買いました。予約してなくても販売開始日に普通に売ってたのでついポチってしまいました。そう、この頃は買おうと思えば普通に買えたんです。

 

しかしながら、ここで面白い事態が起きます。

なんと予定数の約半分しか供給できず、残りはまた後日に販売をすることなったのです。ただ当時、供給が間に合わなかったという情報を、自分がどこでどう知ったんだったか記憶がありません(すみません

またこの辺りの事情に関する公式のお知らせは、現在見つけることはできませんでした。

おそらく前述の特注ケースの問題が原因だったのではないかと推察されます。

 

現在、中古売買時に強調されている1stロット、2ndロットというのはこのことです。遅れて販売された分を2ndと、後から呼ぶようになったんですね。

 

もうひとつ面白い話です。

私が手に入れた1stロットのシリアルは500番台でした。Twitterで手に入れた人の報告見ると、軒並み三桁中盤。つまり1stと言っても日本に入ってきた分は割と後半に作られたものということになります。

日本ブランド同士のコラボなのに、日本が後回しにされたという悲しいペダルがTSV808なのです。

 

ちなみに二桁シリアルのTSV808がこちら。

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右側が二桁。左は後から手に入れた1700番台です。(最初に買った500番台は、高騰する前にほぼ定価で手放してしまったのでした。500番台はもう少し緑みが強かったです

 

明らかに色味が違います。

本来は最後までこの色味で売られるはずだったのでしょうか。しかし後半にいくにつれてどんどん緑みが薄くなり、縁の加工も無くなってムラのない茶色よりの色味になっていきます。1700番台に至ってはJanRayなどと比べてようやく緑かな?と感じるくらい。ほとんど茶色です。

さて、ここで思い出してもらいたい。2019年夏のアナウンスを。

 

"従来製品とは比較にならないほどのカスタム製品として仕上げる為に妥協できないポイントと判断し、こういったお知らせに至りました。"

 

いやいや、思い切り妥協してるやん!!!!

同じ時期に同じ値段で買って、なんで筐体の色味がここまで違うのか。2桁シリアルの頃は出来てたんだから時間かけたら同じ色味に出来るはずです。でもそれはやらずに妥協して、納期優先で日本人にはうっすい緑色の加工をしたものを販売したわけです。

なんなら実はサウンドまで違いますからね。

 

二桁の方は同じセッティングでもよりスッキリしていてTS808に近い雰囲気があります。後半のものはややゲインが高めというか、音像の太さがあります。派手なサウンドという印象です。

 

この二桁シリアルのTSV808を手にした時に、Ibanezへの不満が爆発しました。やるならどんだけ時間かけてでも妥協せずに同じクオリティで最後まで作ってほしかった。

 

 

さらにムカつくことにサウンドは半端なく良いです。

これを今後二度と作らないのは本当にもったいないと思います。この形、この色味にこだわらずにこのサウンドを再現したペダルを今後絶対に発売すべきだと思います。

 

(追記)

2ndロットが出たのは2020年の5月頃だったと記憶しています。この頃は、TSV808の評価もひと段落して熱はある程度おさまっていました。1st完売後の高額転売(と言っても7〜8万くらい)も落ち着き、買おうと思えば買えるペダルだったと思います。

2ndロット完売からしばらくは中古価格は定価とほぼ変わらないくらいまで下がってました。

 

ところがです。

2021年に入る前あたりから異様に高騰し始め、いつのまにか10万円を突破し今に至ります。

要因はよくわかりませんが、コロナ禍によるお家需要の増加とか、有名アーティストが使用したとか、VemuramのJanRay再評価の流れとか、いろいろ影響していると思います。

 

かくして今や15万くらい用意しなければ手に入らないペダルになってしまいました。

 

余談ですが、現在のエフェクター転売横行の火付け役になったのは間違いなくTSV808です。

限定や品薄のエフェクターは高額で売れるという認知を一気に広めてしまった罪深いペダルでもあります。(同じ時期にCULTのTS modやらOrga Face NKT275などが売られて余計に加熱しましたね

 

嘘か真か2022年になってジョンメイヤーがボードに採用したとかいう情報まであります。今後再販があるかわかりませんが、エフェクターの歴史に残るペダルになったのは間違いないでしょう。